アーチファクトについて 国家試験対策

国家試験でも臨床の現場でも悩まされるアーチファクトのお話。学生のときからたくさんありすぎて覚えれないよーとなる人も少なくないかもしれません。

実際MRI撮影していて重要だと思うものは

モーションアーチファクト(体動アーチファクト)

折り返しアーチファクト(エリアジングアーチファクト)

磁化率アーチファクト

ぐらい?でしょうか

学生が国家試験対策で覚えておくべきことは

ほとんどのアーチファクトは位相方向に出現する。周波数方向にでるのはケミカルシフトアーチファクト(化学シフトアーチファクト)ぐらい!ということですかね… あくまで国家試験レベルでは、の話ですので悪しからず。

あと折り返しアーチファクトの対策としてオーバーサンプリングを設定するというのは定番の問題ですね。

臨床向けのアーチファクトの話はこちらで解説しています。

MRI 位相方向の設定について 臨床向け 新人の方へ

撮影する部位によって位相方向というのは基本的に決まっています。例えば頭部MRIのアキシャル(冠状断)でしたらRL方向(左右)ですし、脊椎spineのサジタル(矢状断)だとFH方向(頭尾)、腹部のアキシャルだとAP方向(前後)と相場が決まっています。

まず位相方向を決める上での条件として①その方向を位相方向としたときに生じるアーチファクトはないか。②撮影時間をより短縮できるのは位相方向をどちらに設定したときか。この2点が重要になってきます。

①その方向を位相方向としたときに生じるアーチファクトはないか。

考えられるのはフローアーチファクトとモーションアーチファクトとかでしょうか。頭だとわかりにくいですが頸椎のサジタルとかだとわかりやすいでしょうか。頸椎はその腹側には咽頭があり呼吸や嚥下によって動きます。頭側には頭蓋があり背側は何もなく尾側には胸椎があります。仰臥位のときこの中で動いているのは咽頭のみです!つまり頸椎の矢状断サジタルを撮る際は位相方向をAPにするよりFHに設定したほうがモーションアーチファクトは低減します。

ほかにも腰椎の冠状断コロナルはFH頭尾とか(RL左右だと呼吸によって動く後腹膜臓器がモーションアーチファクトとなる)、膝の矢状断サジタルはFH頭尾とか(AP前後だと膝の背側にある膝窩動脈という大きな動脈のフローアーチファクトが膝にかかってしまう)経験するうちに無意識に設定できるようになると思います。

②撮影時間をより短縮できるのは位相方向をどちらに設定したときか。

頭部の横断像アキシャルを想像してください。頭は動きません。

つまり位相方向をどちらに設定しても動きのアーチファクトはありません。正直AP前後方向でもRL左右方向でもどちらでもいいです。しかし、少しでも撮影時間を短くしたいとき、撮影時間は位相数に比例するため、少しでも位相数を減らせる向きに位相方向を設定したいです。そう考えると、正常の頭は縦長の楕円形なのでAPよりRLの方が径が短いです。よって頭のアキシャルの位相方向は通常RL方向となります。※DWI含め一部シーケンスは除く。

反対に腹部のアキシャルなんかはRLでもAPでもどちらに位相方向を設定しても呼吸によるモーションアーチファクトが生じます。なので、より撮影時間を短縮するためには…そうです。腹部のアキシャルは通常AP方向に位相方向を設定します。そうすることで余分な位相数を削り撮影時間を短縮することができます。

このようにまずモーションアーチファクトを考慮し、次に撮影時間を最適化する。よく撮影する部位については基本的に設定する位相方向が決まっていますが、珍しい病変を撮る際、原理を理解し、適切な位相方向を設定する必要がありますのでぜひ経験を積んでください。

撮影時間について理解できていない方はこちらをご確認ください。

ありがとうございました!

MRIのスライス厚とSNRの話

MRIを撮影する際のスライスの厚さ(スライス厚)は装置のスペックにより設定できる最小の厚さが決まっています。

それは最大傾斜磁場強度によって変化します。

薄いスライスの方が見たいものを細かく見れるからとにかく薄く撮ればいいんじゃない?と、思う方もいらっしゃるかと思いますがMRIにおいて薄すぎるスライスというものはそれなりのデメリットが生じます。 それはSNRが大きく低下するということです。

これはCTにも共通する話ですがスライスの厚さというのは1ボクセルのうちのZ軸方向の大きさを表します。縦だろうが横だろうが高さだろうがボクセルサイズが小さくなれば信号に対するノイズの割合が増えてSNRの低下した画像となります。それを補うためには例えばCTなら線量を増やせばいいのですがMRIだとそう簡単にもいきません。

薄いスライスがいい!さてスライス厚を半分にするだけで…

前と同じSNRを得るためには4倍のNEX: 加算回数(撮影時間は4倍になります)にしたり、NEXを少し上げつつMatrixを下げる(分解能を下げる)など、何かを犠牲にしてSNRを担保しなければなりません。

これらは撮影時間の延長に繋がりますので患者さんにより多くの負担を強いることになります。

5mmの大きさの病変を2mm〜3mmのスライスで評価するのは理解できますが20〜30mmの大きさの病変なら5mmとか6mmなどの厚いスライスでも十分評価できます。ターゲットを見極め、無駄な条件で設定せずに必要な情報はしっかり得ながら最短時間で検査することこそMRIの撮影者に求められるスキルだと思います。

アキシャル サジタル コロナル(体軸断-横断像 矢状断 冠状断)について

国試でこんなこと出たかな?

サジタル アキシャル コロナルって社会人になってからちゃんと覚えたけど、

覚え方とかは特にないです。経験が大事なので画像見てその画像がどれなのか体で覚えるのが早いと思います。

ちなみに臨床現場では

体軸断(横断)・・・アキシャルaxial もしくは トランスバースtransverse

矢状断・・・サジタルsagittal

冠状断・・・コロナルcoronal

とかって言います。トラ、コロ、サジなど略していうこともあります。

MRI画像に名称を付ける際, fast spin echoのT2強調画像のトランスバース画像のことをT2 FSE TRAってかんじに名前を付けたりします。

では画像いくつか載せますのでみんなで覚えましょう。

腹部のtraです
頸椎のsagです
頭のtraです
指のsagです
頸部のtraです
膝のcorです

どうでしょう。だんだんイメージを掴んできましたか?

頭部のsagです
←左が肩のcorで  →右が肩のtraです

googleの検索画面などで『MRI 画像』で検索かけるとたくさん画像出てきますのでそれ見て自分でクイズしたらすぐ覚えれると思います。百聞は一見に如かずですのでぜひ試してみんなで覚えましょう!

MRIの解像度 Matrixについて

CTやMRI、レントゲンなどの画像を撮影する際、写真と同じで画素数というものが必ず決められています。

画像の取得原理の違いからCTやレントゲンのmatrix数は装置で固有(ex.512×512, 1024×1024などスペックによる)であるのに対してMRIは任意のmatrix数に変えることができます。これは放射線を使った画像の分解能は装置に搭載されている放射線検出器のサイズに依存するためです。

一方MRIでは得たい画像によって任意にmatrix数を設定することができます。MRIのmatrixは縦×横のpixel数が必ずしも同じとは限りません。これはMRIの撮影時間が

で表されるからです。MRIのmatrixは位相方向のpixel数×周波数方向のpixel数で表されます。位相数というのは位相方向のpixel数のことです。

図のように位相エンコードと周波数エンコード方向のpixel数が等しい場合はpixelの形が正方形になりますが、臨床においてこのようなMatrixの設定をしている施設はほぼないでしょう。(等方ボクセル:3方向同じボクセルで撮影しないといけない撮影も中にはあります…)

理由としてはとても撮影時間が長くなってしまうからです。

図の(a), (b), (c) 3つの画像のうち撮影時間はいずれも同じです。ここでscan%というのは周波数方向のpixel数に対する位相方向のpixel数となります。(ex.Matrix scan: 512 Scan%: 50のとき周波数方向のpixel数は512×0.5=256となります)

(a), (b), (c) 3つの画像は撮影時間が同じにもかかわらず分解能は(c)が最も高く、続いて(b),(a)の順に分解能は低下していきます。なぜなら3つの画像の位相方向のpixel数はどれも等しいのに周波数方向のpixel数が異なるからです。撮影時間が同じならより高分解能な画像を撮りたいですよね?

実際にMRI装置を触るとわかりますが基本的には全体のMatrixを入力するところがあって、次にその値に対して位相方向のMatrixをどうするか入力する欄があります。

あまり適当なことは言えませんがうちの大学だと周波数方向のpixel数に対して60%~80%で設定することが多いですね。動く高齢の患者さん、じっとできる若い患者さんなど状況に応じてパラメーターを組めるのが理想の技師だと思います。

こんな感じで臨床に特化したMRIの知識を提供していきます。MRIについてもっと知りたい方はまた見に来てください。