肝臓MRIについて

肝臓の検査には採血検査、超音波検査、CT検査、MRI検査と様々あります。MRIは中でも“精査”として行われることが多いです。同じ肝細胞癌でもCTとMRIではその検出精度が異なります。一般にMRIの方が検出精度が高いといわれています。それはMRIの信号取得原理によるものもありますが、造影剤として用いられるGd-EOB-DTPAによる要因が最も多いです。

一般にCTやMRIで用いられる造影剤というのは血液の信号を強調させて臓器への血液の流れや、取り込まれ方を見ることが多いです。Gd-EOB-DTPAはそういった機能も果たしつつ、投与後約20分で正常な肝細胞に取り込まれるという性質があります。つまりGd-EOB-DTPAを取り込めない肝細胞癌を低信号に描出することからGd-EOB-DTPAを用いたEOB MRIは肝臓癌の検出に優れています。Gd-EOB-DTPAは肝臓専用のMRI造影剤として使用されます。

ただ投与後約20分で正常な肝細胞に取り込まれるという性質がありますので投与後20分経過してないうちは検査が終われません。造影剤を入れる前も撮影がありますので検査時間は25~30分かかります。

造影前には、造影剤の入っていない状態でT1WIのin phase, out of phaseを取得します(肝臓への脂肪成分の沈着を確認)。

造影直後は3回、T1強調脂肪抑制画像を撮影します。それぞれ動脈相門脈相平行相といいます。造影の肝臓CTも同じことをします。CTの場合、ここまでで検査終了となります。

MRIの場合、造影後15~20分経過してから肝細胞相を撮影しますので、造影後はT2強調画像やDWI拡散強調画像などを呼吸同期やら時間のかかる撮影をしながら時間を潰して、所定の時間が経過したときに肝細胞相を撮影して終わり!という流れですね。

引用:日経メディカル 肝細胞癌スクリーニングに新たなMRI造影剤登場

ちなみにMRIもCTも共通していることですが、肝臓の造影検査は3相撮影します。動脈相というのは動脈血(肺から運ばれる血液が豊富→酸素がたっぷり)の取り込みを、門脈相門脈血(腸で吸収した栄養を肝臓へ運ぶ血液→栄養が豊富)の取り込みを、平行相というのは造影剤が全身にいきわたった際の評価をしています。

ちなみに癌細胞といわれるものは腸からの栄養になど見向きもしません。酸素が豊富な動脈血を好みます

つまり肝細胞がん動脈相濃染(のうせん:造影剤で染まること)し、門脈相wash out(ウォッシュアウト:造影剤が抜けること)し、平行相では門脈相と同様、造影剤が抜けた状態となります。↑上の写真の通りです。

そしてMRIにおいては使用している造影剤Gd-EOB-DTPAの特性により肝細胞相では正常な細胞でない肝細胞がんは染まりません

造影後に撮るシーケンス

Gd造影剤の構造の1つ 引用: 厚生労働省HP

造影後に撮るのはT1強調画像だけって知ってました!?

MRIの造影剤には必ずといっていいほどガドリニウム(Gd)が含まれます。これは重金属であり単体では人体に有害な物質ですが科学者達の努力によってキレート構造を付与することで安全性を確保しています。簡単に言うとGdを安全な袋に閉じ込めて、有害な機能を封じ込め、長所だけを利用しようということです。Gdの長所とはGdの付近のプロトンにT1短縮効果を付与するということです。難しいことはさておき、要は造影剤のあるところはT1で高信号になるということです。

つまり造影後に撮るのはT1強調画像だけでいいということです。ちなみにT1強調画像では脂肪や骨、造影剤のあるところが高信号になります。(T2強調画像やDWI拡散強調画像は造影前でも造影後でも画はほぼ変わりません)

脊髄は脂肪成分がないため造影後も通常のT1強調画像を撮影したらいいですが、その他の部位では造影剤で濃染(のうせん:造影剤によって高信号になること)される腫瘍や病変に脂肪成分が混在していたり骨に隣接したいた場合、T1強調の脂肪抑制画像を撮影しなければなりません。なぜならその高信号が造影剤によるものなのか脂肪や骨に由来するものなのか判断がつかないからです。

(左)造影前T1強調画像 (右)造影後T1強調脂肪抑制画像

例えば画像は前立腺レベルのアキシャル画像ですが、例えば造影後に脂肪抑制をかけていないと骨転移とかあっても見つけられないわけですね。

まとめ

  • 造影後にはT1強調画像を撮る
  • 脊髄の造影後はT1強調画像
  • それ以外の部位ではT1強調脂肪抑制画像を撮影する