造影後に撮るシーケンス

Gd造影剤の構造の1つ 引用: 厚生労働省HP

造影後に撮るのはT1強調画像だけって知ってました!?

MRIの造影剤には必ずといっていいほどガドリニウム(Gd)が含まれます。これは重金属であり単体では人体に有害な物質ですが科学者達の努力によってキレート構造を付与することで安全性を確保しています。簡単に言うとGdを安全な袋に閉じ込めて、有害な機能を封じ込め、長所だけを利用しようということです。Gdの長所とはGdの付近のプロトンにT1短縮効果を付与するということです。難しいことはさておき、要は造影剤のあるところはT1で高信号になるということです。

つまり造影後に撮るのはT1強調画像だけでいいということです。ちなみにT1強調画像では脂肪や骨、造影剤のあるところが高信号になります。(T2強調画像やDWI拡散強調画像は造影前でも造影後でも画はほぼ変わりません)

脊髄は脂肪成分がないため造影後も通常のT1強調画像を撮影したらいいですが、その他の部位では造影剤で濃染(のうせん:造影剤によって高信号になること)される腫瘍や病変に脂肪成分が混在していたり骨に隣接したいた場合、T1強調の脂肪抑制画像を撮影しなければなりません。なぜならその高信号が造影剤によるものなのか脂肪や骨に由来するものなのか判断がつかないからです。

(左)造影前T1強調画像 (右)造影後T1強調脂肪抑制画像

例えば画像は前立腺レベルのアキシャル画像ですが、例えば造影後に脂肪抑制をかけていないと骨転移とかあっても見つけられないわけですね。

まとめ

  • 造影後にはT1強調画像を撮る
  • 脊髄の造影後はT1強調画像
  • それ以外の部位ではT1強調脂肪抑制画像を撮影する

水/脂肪信号相殺法 Dixon法について

脂肪抑制法の1つであるDixon法は比較的新しい部類の撮影法なので古い装置だと使用できないこともあります。

原理は意外と簡単で、水プロトンと脂肪プロトンの位相差を利用して決まったTEで信号を受信し、2つの画像を得る。磁化ベクトルが同じ方向を向いた画像をin phase, 反対の方向を向いた画像をout of phase(またはopposed phase)という。

これら2つの画像を用いて脂肪抑制画像を算出します。

また脂肪抑制画像だけでなく、得られたout of phase画像も臨床によく用いられます。

副腎腺腫の症例。T1強調画像in phaseでは腫瘤は肝と同程度の中間信号を呈しているが、脂肪抑制画像であるout of phaseでは信号が低下しているので脂肪の存在を証明でき、副腎腺腫と診断できる。

異なるTEを用いて脂肪抑制画像を取得するので周波数選択的脂肪抑制画像であるChess法より磁場の不均一に影響されにくいです。

ある程度の広範囲の撮影や肺の近く、手や頚部, 足など複雑な形状の部位(Chess法だと脂肪抑制にムラが生じる場所)でも均一に脂肪抑制をかけることができます。

加えてT2強調画像とT2強調脂肪抑制画像を同時に取得できるので別々に撮影するより時間の短縮ができます。STIRのようにSNRが低下することもありません。ただし、金属の周囲に関しては計算がうまくいかず脂肪抑制が効かない場合があるため、金属の周囲を脂肪抑制したいときはSTIRを使用してください。(造影前に限る)

脂肪抑制方法についてはいくつか種類があり、使い分けがありますが、原理を理解し正しく使いましょう!

脂肪抑制Fat suppressionについて

脂肪抑制はMRIを撮影するうえで欠かせない撮影法です。

その種類は大まかに

周波数選択的脂肪抑制・・・Chess法(ex, SPIR, SPAIR)

非周波数選択的脂肪抑制法・・・STIR法

水/脂肪信号相殺法・・・Dixon法(ex, dixon, FLEX)←国家試験には出なかったと思います…

があります。

原理は後述するとしてその使い分けについて説明したいと思います。

まずそれぞれのメリットデメリットがありますのでそちらを紹介します。

こんな表見てもよーわからんわ!って方へ簡単にまとめると

金属がない場合・・・Dixon撮れる装置ならDixon一択。早いし磁場の不均一に強い。その次にChess。STIRはSNRが低くなるからなるべく使いたくない!ただ古い装置だとDixonが使えないこともしばしば…その時は磁場の均一な部位はChess法で、不均一な部位はSTIRを使用しましょう。不均一な部位については後述します。

金属がある場合・・・STIR一択。他では太刀打ちできません。その代りSNRを向上するためにスライス厚, 分解能, 加算回数, オーバーサンプリングなどのいずれか, もしくは複数を選択して設定してくださいね。